再会。

レクイエム

レクイエム

本がなかなか読めない日が続いていた。時間的な問題ではなくて、自分の気持ちの問題だ。文字を落ち着いて追いかけられず、ページをめくることが出来なかった。無性に気分がざわざわして、楽しみとしての読書からは遠ざかっていた。
アントニオ・タブツキは2冊目。図書館棚で見つけたとき彼の名前は覚えていたのに、何で覚えているのか、自分はかつて読んだことがあったのかは忘れていた。タブツキという、独特の語感だけが記憶の枝葉にひっかかっていたのだよ。
夢にも幻想にも自覚的でありながら、ふらふらと漂い、さまよい続ける主人公。こちらも迷子になりながら、本の中につかる。幸福な読書体験こそ、本への回帰起爆剤になる。

供述によるとペレイラは…

供述によるとペレイラは…

アントニオ・タブツキ1冊目。かぶりつくように読んだのは確か2年前の夏のこと。須賀敦子のエッセイで、ちらりと名前を見かけたからだ。細かな描写は忘れたが、作品と同様に自分も照りつける太陽を避けるようにして、クーラーの下ひっくり返りながら、この本を読みふけっていたことだけは覚えている。