映画のしあわせ。
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「そして僕は恋をする」の監督が撮った作品、ということで主人公のカップルも「そして〜」の引継ぎカップルだ。エマニュエル・ドゥボスは、「そして〜」を観たとき何て不思議なカオした女優なんだろうと首をかしげたものだったが、今回の作品では素敵な30台女性になっていて、こんなにキレイな人だったっけ?と驚いた。
冒頭は「ムーン・リヴァー」の音楽から始まる。ずるい。これで、この瞬間に、この映画の自分の評価は決まってしまう。そう思った。「ムーン・リヴァー」を聞くと必然的に「ニューヨークの恋人」を思い出す。大学2年生のときにとった映画の授業で、課題となっていたこの作品を見た後、その講義を担当していた梅本洋一氏が「ムーン・リヴァー」についての講釈をしてからだ。あの時、先生が何を話していたのか、もはや覚えていない。「ティファニーで朝食を」から、その映画音楽の記憶が複数の映画を通して引き継がれていく。そんなことを言っていたのではなかったかな。それ以来、「ムーン・リヴァー」の旋律が流れるといつも「ニューヨークの恋人」が頭をよぎり、同時に気持ちが穏やかではなくなる。うまく言えないが、映画のパワーに圧倒されて泣きそうになる。
と思っていたら、何と梅本氏の「キングス&クイーン」に関する文章を発見。「ムーン・リヴァー」に関する記述を見つけて、何だか可笑しくなってしまった。先生、教え子も時間と空間を越えて、ほんの、ほんの少しのDNAを受け継いでいます。「ティファニーで朝食を」も、これから観ます。
映画を観続けながら、私も年をとる。映画を自分の記憶にあわせて観る様になる。音楽の記憶に強く揺さぶられながら、でもこの作品は音楽を超えて、作品自体の強さがあると思う。人生で起こってしまったこと、いま起きていること、受難は数あれど、苦しさを感じるからこそ誰かの愛情に包まれていることも知る。家族という枠に頼らない。人生の歩み方、方法をそれぞれが模索して、奔放に見えても実際は地道に一歩一歩確かめながら歩いていこうとする。
主人公たちに拍手したい。
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