独り語りの罪。

さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生 (集英社文庫)

さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生 (集英社文庫)

地下鉄サリン事件実行犯である豊田被告の同級生が書いたノンフィクション。
ひと言でいえば、客観的な視点が乏しいノンフィクションである。著者の思い・考えが強く表に出てき過ぎて、実際の豊田被告を浮き彫りにしているとは、とても言えない。
知識、調査結果は確かに十分あるのだが、事象を追う材料として機能していない。それらは、著者があらかじめ設定していたゴールに向けて、披露されているように見える。作品の中の時間軸もバラバラで(狙った構成であろうが)、起承転結が見えない。
ミステリー仕立てにする必要は果たして、あったのだろうか。