80年代に帰る。

愛と青春の旅だち [DVD]

愛と青春の旅だち [DVD]

デブラ・ウィンガーが観たくて手にとり、彼女以上のものを得てしまった。
原題である「ある士官とある紳士」が示すとおり、むしろデブラとの恋愛は側面であって、主人公メイヨの士官学校での成長がこの映画の本題であろう。
自分でもまさかと思ったのだが、メイヨが途中「帰る場所がない」と教官に叫ぶくだり、不本意ながら涙がこぼれた。映画を観て泣くなんて、本当にどれくらいぶりだろう。
鬼教官とのやり取りも見ものなのだが、同時にメイヨと同級生たちの結束が強くなっていく過程もいい。
私はラストのデブラを迎えにいくメイヨよりも、卒業式のメイヨが好き。卒業式の場面が、この映画の終わりにふさわしく思った。

「愛と追憶〜」以来、80年代のアメリカ作品はまだ2作品しか観ていないのだが、思いもよらない良作であった。
今の私の興味は、80年代アメリカの女性である。あくまで映画での知識しかないが、ヨーロッパの女たちは80年代より前から、もう少し男に対しても主張があった。意思があった。
でも、デブラが演じる女はまだ男よりも少し後ろに居る。男が自分を幸せにしてくれる、という幻想を堂々と生きている。
私も生まれた年も、まだアメリカそのような時代だったのだ、というのが今の私の驚きなのである。
・・・と偉そうに言ったところで、まだその幻想は今の日本でも全くなくなっていないし、私からも完全に消えてはいないのであるが。