永遠の思い出し笑い。

ヒナギクのお茶の場合

ヒナギクのお茶の場合

多和田葉子は一度挑戦して挫折した過去がある。あの時、何で受け入れられなかったんだろう。
今回、読み進めるうちにぐいぐいと異空間へ自在に連れ出してくれる多和田ワールドにすっかり魅了されてしまった。ドイツという場所はわたしにとって遠いが、全く持ってその距離感は感じない。世界が瞬間的に色を変えてもその変化についていけないが故に、そこに留まりながら自分と世界との差異をぽかんと見つめている感覚が、この短編の主人公たちにはある気がしてどうにも引き込まれる。