記憶を上重ね。
- 作者: 保坂和志
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1999/09/01
- メディア: 文庫
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初めの頃のような鮮烈な印象はさすがに薄れたが、それでも感情があふれる場所はいつも同じ。蝦ノ木の職場のビデオを、主人公が夜中に観て「あっ」と思ってしまう瞬間だ。
ビデオに正直に映ってしまう、人がもつれ合って混在している様が愛おしくてたまらない。それは作品の根底に共通して流れているテーマでもある。
初めて読んだのは、大学生の頃。今勤め人になって、この作品に出てくる人の背景や気持ちが、あの頃よりもわかるようになった。
そして鎌倉の風景に、私は少し詳しくなった。