記憶を上重ね。

季節の記憶 (中公文庫)

季節の記憶 (中公文庫)

もう何度も読んでいる。
初めの頃のような鮮烈な印象はさすがに薄れたが、それでも感情があふれる場所はいつも同じ。蝦ノ木の職場のビデオを、主人公が夜中に観て「あっ」と思ってしまう瞬間だ。
ビデオに正直に映ってしまう、人がもつれ合って混在している様が愛おしくてたまらない。それは作品の根底に共通して流れているテーマでもある。

初めて読んだのは、大学生の頃。今勤め人になって、この作品に出てくる人の背景や気持ちが、あの頃よりもわかるようになった。
そして鎌倉の風景に、私は少し詳しくなった。